クリストファー・ノーラン監督が初めて実話の映画化に挑んだ作品『ダンケルク』を観ました。
ノーラン監督と言えば、『ダークナイト』、『インセプション』、『インターステラー』などオリジナル脚本によるSF映画を得意としますが、今回は実話の生々しい戦争映画。
実話ということで描かれるのは、第二次世界大戦の大きな局面のひとつ“ダンケルクの戦い”。
1940年、英仏連合軍は独軍によりドーバー海峡に面したフランスの港町ダンケルクの浜辺まで追い詰められ、撤退を余儀なくされるが、遠浅のため英国大型艦船は浜辺まで近づけず、足止めを食らうことに。しかし、何百隻もの英国民間小型船舶が連合軍救出のために駆け付け、撤退することに成功する、という物語。
その物語を、
陸-ダンケルクの浜辺で救助を待つ英国陸軍兵士の視点
海-遊覧船で浜辺に救助に向かう民間人親子の視点
空-撤退援護のために浜辺に急ぐ空軍パイロットの視点
三つの視点で並行して描かれます。
しかし、
陸の物語は
1週間、
海の物語は
1日、
空の物語は
1時間の出来事で、それぞれの物語は並行して描かれているも関わらず、時間の流れがそれぞれ違います。
つまり、空の物語で描かれる1時間の出来事は、陸の物語の1週間のうちの終盤の出来事とリンクすることになります。そう、映画の序盤、空の物語で英軍戦闘機が被弾して海上に不時着するシーンが再度、陸の物語の終盤でも描かれ、あれ?これさっき見た?という状況に陥り、それぞれの物語の繋がりが非常に掴みづらく混乱する。
ただ、『メメント』、『インセプション』、『インターステラー』に代表されるように、時間の流れを題材に取り込むのはノーラン監督の特徴でもあり、本作最大の彼らしさでもあります。これによって、“ダンケルクからの撤退”という一本調子の流れを観客は緊張感を持って見守らざるを得ないという効果が得られているのも事実。
空の物語で出てくる撤退援護にダンケルクに向かう英軍戦闘機は、最初に撃墜される隊長機、被弾して海上に不時着しドーソン親子の船に救助されるコリンズの戦闘機、ダンケルク沿岸までかろうじて辿り着くファリアの戦闘機で編成された3機のみ。
陸、海、空、それぞれの重要局面で戦闘機が飛び交うので混乱しますが、実際に出てくる英軍戦闘機はこの3機のみだと頭に入れておけば混乱は少なくて済むでしょう。
クリストファー・ノーラン監督の作品は映像表現、物語の構成が毎回秀逸。