「オープニング」脚本:ムロツヨシ開演前、おもむろにムロツヨシが煙草を吸いながら舞台の上下を素通りする。途中、若葉竜也も素通り。
その流れで開演開始のアナウンスが流れるけど、もうすでにムロツヨシは煙草を吸いながら舞台中央に。
そこにライターを忘れたらしい若葉がムロに火を借りて、お礼を言います。その後、ムロの顔をじっと見て、またお礼。不審に思うムロ。
今度は、若葉がムロのほくろを指差して、「ほくろ、やっと会えた」。そこで舞台は暗転して、本編が始まります。
数日前に、道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』を読んでいたので、なんとなく前世で何かあったんだろうな、と勘繰ってしまった。
「=兄弟」脚本:ムロツヨシ実験により大量の煙が舞台上に蔓延。必死で煙を散らそうとする二人。
兄(ムロツヨシ)が弟(若葉竜也)に誕生日プレゼントとして自らが開発したロボを贈ろうとする話。
そのロボは白くて、モコモコしていて、左右非対称で、形がいびつで、話すことが出来ない。あまり役に立たなさそうな感じ。
兄は、自分が闇の組織に殺されたりして、誰かと共に街を守ろうとする時にそばにいてくれるはずだと言う。
「それって、ベイマ・・・」と何度も突っ込もうとする弟、それを制する兄。
そして、優しそうだから“やさ”という名前を兄は付ける。もちろん、弟に「優(ゆう)じゃないんだ」と突っ込まれる。
“やさ”の動きが緩慢過ぎて、色々と突っ込まれるけど、弟を優しく包み込んではくれる、それだけ。
「=他人」脚本:ふじきみつ彦田舎のコインランドリー。洗濯にやってきた地元出身の39歳の男(ムロツヨシ)。
唯一空いていた洗濯機にせっせと洗濯物を入れようとする。
そこへ、東京から引っ越してきたばかりの元マジシャンだという26歳の男(若葉竜也)がやって来る。
「今日、東京から引っ越してきたばかりじゃないですか」、「疲れてるんですよ」、「田舎の人ってもっと優しくしてくれるのかと思いました」、「39歳なのに困っている若者を助けないですか」など、いかに自分が困っているかを主張し、相手に非があるかのようにグイグイ迫り、あげくの果てに自分の洗濯物も一緒に入れてくれないかと懇願してくる。
それに対して、強く断れずに振り回されるムロツヨシの姿がなんとも愛おしい。
そんな中、「綾瀬はるかでもですか?僕が綾瀬はるかでも断るんですか?」という若者。
それにキレたムロツヨシが「逆に綾瀬はるかならいいです。一周回って綾瀬はるかなら全然いいです」と反論する。
あげくの果て、若者がワーとなってムロツヨシが入れた洗濯物を全部放り出してしまう始末。その後、我に帰ってマジックで元に戻したり。
最後は、残り23分で洗濯が終わる他の洗濯機を待つように説得するけど、“23分経って戻って来なかったらずっと待ってないといけないんですよ、一人じゃ寂しいから一緒に待ってください”と若者はさらに無理を言う。
付き合いきれずにその場をあとにするムロツヨシだったが、若者が椅子に腰掛けた途端、戻ってきて隣に座る。
そして、うなだれた若者の後ろから“やさ”が現れ優しく包み込む。
“困っているのは君じゃなくて、俺だ”というムロツヨシにムチャクチャ共感する。
第二次ベビーブームの次に生まれた世代は自己を主張することがなく、こういう時に強く断れないのだという。その感じを表現したかったらしい。“俺が、俺が”の本田圭佑の世代とは全く違うとカテコで主張してました。
自分も強く断れない性格ですけど、これは世代のせいだけじゃないと思いますけど・・・。
続いて、“やさ”のミニコーナー。
ムロツヨシが“やさ”に優しさの訓練をします。それは、雨宿りをしている転校生に傘を差し出すというシュチュエーション。
“やさ”が傘を持っている姿がまぁまぁかわいい。
「=親友」脚本:福田雄一若い兵士(若葉竜也)のゼロ戦に搭乗しての特攻の前夜の話。
家族への想いにふける若い兵士の部屋に幼馴染の親友(ムロツヨシ)がやって来る。特攻前夜はひとり部屋で過ごすことが許されているのにおかしいと思いつつ、懐かしさに頬がほころぶ。
彼は、鹿児島の知覧に配属されていたが上官にあれこれ頼み込んで、この地にやって来たらしい。
とりあえず、明日の出撃は10時なので早く寝ようとする若い兵士。
親友は派手な緑のパジャマに着替える。
それは何だと聞かれ、親友は“パジャマ”と答えるが、“敵性語”を使ってしまったとあたふたする。でも、日本語だと“寝巻き”だけど、寝巻きではないとぶつぶつ言う。
どうでもいい(笑)
なんやかんやあって、親友は実は自分は幽霊だと告白する。
特攻に行く途中で墜落し、クジラに飲み込まれてしまったけど、クジラの胃の中で生き残り、胃液を避けながら、嫌いな生魚を食べて生き延びたのだそう。しかし、最後は上から降ってくる胃液を避けきれずに死んでしまったのだと。
特攻は“自殺”ということで閻魔様に地獄生きを命じられるけど、自分は嫌いな生魚を食べてまで生き延びようとしたので自殺じゃないと反論する。
この閻魔様が小さくてサ行の活舌が悪いという設定。
閻魔様のくだりがムロツヨシの独壇場。サ行が言えない閻魔様がかわい過ぎた。
親友は、血の池地獄のボイラーが入っていなくてぬるま湯だったとか、鬼の前で芸を見せて地獄行きを逃れないといけない、とか色々な話をする。そうだ、親友は幼い頃からホラ吹きで有名だったのだ。
そのおかげで兵士は眠れるような気がしてくる。しかし、親友は枕投げをしようと、断る兵士を無視して布団の中から大量の枕を投げつけます。
そのまま、朝を迎える。兵士が目を覚ますと目の前に特攻服を着た親友が現れる。枕投げが原因で兵士が寝坊したため、この日の特攻は中止になったと伝える親友。
親友は、自分は本当に幽霊で、死ぬと未来のことが見えるという。この日は8月15日で戦争が終わるので特攻しても無駄死にだと言って、彼を必死に止める。
自分がこの世に居られるのも今日が最後。自分が特攻して成仏するのだという。
兵士は親友に「あの世で会えるのか」と聞くが、「来世で会おう」と答える親友。
兵士は親友を見つける自信がないので、ほくろを同じ位置に付けていてくれるよう頼む。
そして、無人のゼロ戦が飛び立つ。
オープニングのシーンに繋がる。
若葉竜也がムロツヨシの“ほくろ”と指差し、「やっと会えた」と。
すると、ムロツヨシが「会えたね」と。
福田雄一っぽくない最後。
泣かせて終わらせたらあかんわーと思ってたら、お決まりのムロツヨシの超絶長い話が待ってたカテコ。これですっかり舞台の余韻を忘れて家路につく。
次回は記念すべき10回目なので、何か盛大にやりたいそう。
小栗旬やら小泉孝太郎やら交友関係がやたら広いのに、ヨーロッパ企画の永野&本多コンビと組みたがるのはなぜだろう?